September 2014

フィリピン南部の和平プロセスに関する主な出来事(2014年9月)

1) バンサモロ基本法案、国会に提出
2) 元大統領顧問、新自治政府移行の2019年延期を呼び掛け
3) 下院委員長、2015年3月の住民投票実施目指す
4) 戒厳令下のイスラム教徒虐殺、人権委が犠牲者認定へ
5) 下院議員、住民投票対象からパラワン州の除外求める
6) 国内の武装勢力監視で政府とMILFが協力
7) 正常化の具体的協議始まる

 1) バンサモロ基本法案、国会に提出

 政府と反政府武装勢力モロイスラム解放戦線(MILF)の枠組合意(2012年10月)と包括的和平合意(2014年3月)に基づき、新自治政府「バンサモロ」創設を柱とするバンサモロ基本法案が10日、国会に提出された。当初予定から4カ月遅れで、政府・与党は2015年3月までの可決、成立を目指す。

 法案は全122ページ。MILF側のイクバル和平交渉団長が委員長を兼任するバンサモロ移行委員会(BTC)が起草した。

 早期可決を目指す現政権の姿勢を強調するため、ドリロン上院、ベルモンテ下院両議長をマラカニアン宮殿に招いて、アキノ大統領自身が手渡した。同席者はイクバル団長、デレス大統領顧問(和平問題担当)、オチョア官房長官ら。

 最大の懸念材料は、基本法案の基礎となった包括的和平合意の違憲性を問う審判。最高裁で審理が続いており、違憲判断が出た場合は、現法案の破棄や一部修正を余儀なくされ、「現政権下での新自治政府創設と最終和平合意」という大目標の達成に黄信号がともる。

 バンサモロ基本法案は、①新自治政府の権限や管轄領域、統治形態、財政の独立性②創設へ向けた移行手続き③紛争地域の復興・開発やMILF部隊の解体、などを定める。可決を待って2015年半ばまでに、新自治政府への編入の是非を問う住民投票がムスリム・ミンダナオ自治地域(ARMM)の5州1市などで実施され、管轄領域が確定する。その後は、暫定統治機構のバンサモロ移行局(BTA)新設と同時にARMM政府が廃止され、2016年5月の次期大統領選で新自治政府の議会選が同時実施される。(日刊まにら新聞9月11日付紙面より)

 2) 元大統領顧問、新自治政府移行の2019年延期を呼び掛け

 モロ民族解放戦線(MNLF)との和平交渉で政府側交渉団長を務めたドゥレサ元大統領顧問(和平問題担当、2001〜03年)は14日までに、現政権とMILFの包括的和平合意に基づく新自治政府バンサモロへの移行を2019年に延期すべきだと述べた。

 ドゥレサ元顧問は、1996年に政府とMNLFが締結した和平合意の見直し作業が、政府、MNLF、イスラム協力機構(OIC)の三者により現在も続けられていることを指摘。バンサモロ基本法案の審議を進める国会が、二つの異なる和平合意を統合し法案に反映する時間が必要だと話した。また、法案が年内に可決したとしても、議員選挙が予定される2016年5月までの1年足らずでは移行準備が十分にできないとし、次々回の統一選が行われる2019年に延期すべきとの見方を示した。

3) 下院委員長、2015年3月の住民投票実施目指す

 バンサモロ基本法案の国会審議を迅速化するために設置された下院特別委員会のロドリゲス委員長は14日、ラジオ局の取材に対し、年内の法案可決、成立と2015年3月末の住民投票実施を目指す方針を明らかにした。

 ドリロン上院、ベルモンテ下院両議長は先に2015年3月の可決見通しを示していたが、ロドリゲス委員長は「マラソン審議と休会中の委員会招集で(クリスマス休会入り前の)12月17日までの本会議可決が可能」と述べ、可決を早めたい考え。

 審議は16日に始まり、その後は聴聞会への関係者招致に加え、カトリック教徒の多いサンボアンガ、カガヤンデオロ、ダバオ、ジェネラルサントス各市などで公聴会を開く。

 住民投票は、同基本法の発効と新自治政府の管轄領域確定に必要な手続き。実施予定地は、新自治政府の「中核領域」と位置づけられる①現行のムスリム・ミンダナオ自治地域(ARMM)に属する5州1市②北ラナオ、コタバト両州の一部自治体③コタバト、イサベラ両市。またこれら中核地域に隣接する地域で、自治体が「地方自治体の決議」または「1割を超える有権者の請願」で新自治政府への編入を求めた場合も住民投票が実施される。(日刊まにら新聞9月15日付紙面より)

4) 戒厳令下のイスラム教徒虐殺、人権委が犠牲者認定へ

 マルコス政権による戒厳令下にスルタンクダラト州パリンバン町マリスボン村のモスクでイスラム教徒約1500人が国軍や政府系武装組織に虐殺された「マリスボン大虐殺」から40年を迎えた24日、人権委員会のロサレス委員長が同村を訪れ、生還者と遺族を戒厳令下の人権被害者として認定すると発表した。

 認定を受け、生還者と遺族は、共和国法第10368号に基づき、国から賠償金を受け取ることができる。同虐殺事件の犠牲者認定を呼び掛けてきたアグハ元下院議員は「40年たちようやく犠牲者は賠償を申請できるようになった。彼らが国による暴政の犠牲者であることが明確に認識されたことは大きな一歩だ」と歓迎した。

 地元の支援団体によると、1974年9月24日、国軍と政府系武装組織が同村を襲撃し、イスラム教徒の男性約1500人をモスク内で銃殺した。女性や子ども約3000人が近くの海軍駐屯地に連行され、性的虐待を受けた住民も多くいたという。

5) 下院議員、住民投票対象からパラワン州の除外求める

 アブエグ下院議員=パラワン州選出=は24日までに提出した決議案で、新自治政府バンサモロの管轄領域を決める住民投票の実施対象からパラワン州全域を除外するよう求めた。

 同議員は、ARMM編入の是非を問う過去4回の住民投票で同州が編入を拒否してきた経緯を指摘。住民のうちイスラム教徒は7〜8%にすぎないと述べ、新自治政府への編入に反対を表明した。同州は比中などが領有権を争う西フィリピン海(南シナ海)南沙諸島などに近く、周辺海域では豊富な地下資源を見込んだ探査・開発が続いている。

6) 国内の武装勢力監視で政府とMILFが協力

 MILFから分派した武装組織、バンサモロ・イスラム自由戦士(BIFF)や、アブサヤフが8月、イラクとシリアで活動する「イスラム国」(IS)と「同盟を組んだ」と主張したことを受け、バルテ大統領報道官補は27日、MILFと協力して国内の武装勢力監視に取り組んでいると明らかにした。

 BIFFの動きを監視している陸軍第6歩兵隊のパギリナン隊長は「BIFF側がISの活動に支持を表明しただけにとどまっており、構成員の派遣などの動きはない」と述べ、事実上の「同盟関係」にはないと説明した。  

7) 正常化の具体的協議始まる

 政府とMLIFの和平交渉団は27日から3日間、マレーシアのクアラルンプールで会合を開き、最大の懸案となっているMILF正規部隊の武装解除を中心とする「正常化」のプロセスについて、国際監視団の正式設置など具体的な協議を開始した。政府側交渉団のフェレール団長が29日、明らかにした。

 同団長によると、ブルネイ、トルコの軍人や在外公館大使ら3人とフィリピン人専門家4人の計7人が武装解除国際監視団(IDB)を構成し、MILFが保有する銃火器、弾薬の保管、武装解除を監視する。2016年の新自治政府設立までは、国軍と国家警察、MILFの三者による治安維持部隊「合同平和・治安チーム」が設置される。

 また、この会合では移行司法和解委員会(TJRC)が初めて招集された。同委員会は司法制度の移行や紛争和解の方法について研究し、移行委員会に勧告を行う。

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註:モニター記事内容は主に以下の現地報道機関のウェブサイトの記事を参考に、筆者が編集した。 

日刊『まにら新聞』(http://www.manila-shimbun.com/
Minda News(http://www.mindanews.com/) 
Daily Inquirer(http://www.inquirer.net/
Philippine Star(http://www.philstar.com/
ABS-CBN News(http://www.abs-cbnnews.com/
GMA News Online(http://www.gmanetwork.com/news/
Manila Bulletin(http://www.mb.com.ph/

フィリピン在住 大矢南
Mindanao, September 2014 

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