May 2015

1)MILF元幹部ウスマン容疑者、正規部隊に射殺される
2) 世論調査で20%がMILFに対する軍事作戦支持。12年ぶりに2割台に
3) 「6月11日までのバンサモロ基本法案可決を」上・下両院議長
4) 基本法案の是非問う世論調査、新自治政府の中核領域で賛成多数
5) 下院特別委、バンサモロ基本法案を賛成多数で可決
6) MILF、修正されたバンサモロ自治地域基本法案に「納得できるのは50%のみ」
7) スル州のモスク付近で爆発、警官11人と民間人7人負傷

1) MILF元幹部ウスマン容疑者、正規部隊に射殺される

 マギンダナオ州で1月に発生した国家警察特殊部隊(SAF)のテロリスト追跡作戦で、対象となっていた反政府武装勢力モロイスラム解放戦線(MILF)元幹部、アブドゥル・バシット・ウスマン容疑者が3日、同州ギンドゥルガン町でMILF正規部隊に射殺された。

 追跡作戦では、SAF側が事前通告なしでMILF領域内に進入したことなどから、MILF部隊との大規模な交戦に発展し、計68人が死亡した。事件を受け、MILFに対する世論の不信感が募り、バンサモロ基本法案の国会委員会審議は一時中断。MILFがウスマン容疑者をかくまっているとの憶測も流れたが、正規部隊による同容疑者射殺を受け、コロマ大統領府報道班長は4日、「和平プロセスに対するMILFの誠意が示された」と述べ、同法案の審議加速に強い期待感を表明した。

 国軍によると、ウスマン容疑者は発見時、MILFの離脱者らで構成される反政府武装組織バンサモロ・イスラム自由戦士(BIFF)の構成員と一緒だったという。同容疑者はMILF離脱後の2007年1月、イスラム過激派のジェマ・イスラミヤ(JI)やアブサヤフと連携して連続テロ事件を起こしており、殺人容疑などで国際的に指名手配されていた。もう1人の追跡対象のJI幹部、ズルキフリ・ビン・アブドゥル・ヒル容疑者は2月に死亡が確認された。

2) 世論調査で20%がMILFに対する軍事作戦支持。12年ぶりに2割台に

 民間調査期間ソーシャル・ウェザー・ステーション(SWS)が4日公表した世論調査(3月20〜23日実施、18歳以上1200人対象)結果によると、MILFに対する軍事作戦実施を支持する意見が20%を占め、2003年6月以来、約12年ぶりに2割台に達した。前回調査(14年3月)の9%から11ポイント増え、警官44人を含む計68人が死亡した大規模交戦(1月25日発生)後のMILFに対する不信感の高まりを裏付けた。

 一方、平和的交渉を支持する意見は45%。最多を占めたものの、前回の62%から17ポイント低下した。交渉と軍事作戦の併用を求める意見は、前回と比べ6ポイント増の35%

 軍事作戦支持は、エストラダ政権が「全面戦争」を仕掛けた00年7月、22%を占めた。01年1月のアロヨ政権発足後、19%(同9月)、15%(同11月)へ減少したが、MILFの犯行とされるダバオ空港、港湾施設爆破テロなどが続いた直後の03年6月、26%に再び上がった。

 その後、MILFとの和平交渉が再開された後の04年10月には9%まで減少。10年6月の現政権発足以降は、MILF離脱者集団の活動が活発化した11年12月に17%まで増え、包括和平合意後の14年3月には再び9%に戻った。

3) 「6月11日までのバンサモロ基本法案可決を」上・下両院議長

 ドリロン上院、ベルモンテ下院両議長は4日、首都圏マンダルーヨン市内のホテルで会合を持ち、会期末となる6月11日までのバンサモロ基本法案可決を目指すことを申し合わせた。両議長は与党自由党(LP)の重鎮。

 現政権・与党は、アキノ大統領の任期が満了する2016年6月までの新自治政府創設、最終和平実現を目指す方針を変えていない。今後、法案が可決された場合も、住民投票やムスリム・ミンダナオ自治地域(ARMM)政府廃止、暫定統治機構の設置、MILF構成員の武装解除などの移行作業が残されており、上・下両院議長が申し合わせた「6月11日までの可決」は、最終和平実現へ向けたタイムリミットの一つとなる。

4) 基本法案の是非問う世論調査、新自治政府の中核領域で賛成多数

 SWSは15日、バンサモロ基本法案の是非に関する世論調査(3月20〜23日実施、18歳以上1200人対象)の結果を公表した。同法案に「反対」と答えた国民はフィリピン全国で48%に上り、「賛成」と答えた23%を大幅に上回った一方、同法案に基づいて創設される新自治政府の中核領域では「賛成」が多数派となった。

 賛成から反対を差し引いた「純賛成度」は全国でマイナス25。すなわち反対が賛成を大きく上回った。しかし、中核領域では、コタバト州一部の91を筆頭に、南ラナオ州86、マギンダナオ州80、北ラナオ州一部77、コタバト市71と賛成が圧倒多数だった。

 一方、中核領域でも、バシラン、タウィタウィ両州は48、30と賛成多数の割合がやや下がった。スル州とイサベラ市では「賛否を決められない」が賛成を上回り、純賛成度はともに18にとどまった。これらの地域には基本法案に反対しているモロ民族解放戦線(MNLF)の一部派閥の拠点がある。

 新自治政府の中核領域は、現ARMMの5州1市(タウィタウィ、スル、バシラン、南ラナオ、マギンダナオ各州とマラウィ市)とイサベラ、コタバト両市、北ラナオ州の6町、コタバト州の39バランガイ(村)で構成される。

5) 下院特別委、バンサモロ基本法案を賛成多数で可決

 バンサモロ基本法案を審議する下院特別委員会(ロドリゲス委員長)は20日、同法案を「バンサモロ自治地域基本法(Basic Law for the Bangsamoro Autonomous Region)と修正し、賛成多数(賛成50、反対17、棄権1)で可決した。6月1日から本会議審議が始まる。

 同委員会は約9カ月にわたり、各地での公聴会と審議を尽くした。ロドリゲス委員長によると、バンサモロ基本法案に「3カ所の内容修正と、90カ所以上の単語、表現の改訂と削除」を施したという。12時間かけて条項ごとに挙手による採決を行った。

 ただ1人棄権したのは、パラワン州選出のアブエグ議員。同議員は新自治政府「バンサモロ」の管轄地域を定める住民投票の実施対象から同州が明確に除外されていないことを理由に判断を保留した。同議員は、現ARMMの管轄地域に入るかどうかが問われた過去4回の住民投票で、住民が一貫して参入を拒否してきたことを踏まえ、州都プエルトプリンセサ市を含む同州全域をバンサモロ管轄領域に関する住民投票から除外するよう求めている。

6) MILF、修正されたバンサモロ自治地域基本法案に「納得できるのは50%のみ」

 下院特別委員会(ロドリゲス委員長)がバンサモロ基本法案を可決したことを受け、MILFのイクバル交渉団長は、自身が委員長を務めるバンサモロ移行委員会(BTC)が提出した法案と比べ、「修正項目の数としては90%満足だが、修正内容について納得できるのは50%」と述べた。「今後、法案がどの程度、枠組み合意および包括和平合意の内容に沿ったものになるかは、アキノ大統領と与党議員次第」と期待を込めた。

 デレス大統領顧問(和平問題担当)は20日、「法成立に一歩近づいた」と可決を歓迎。「まだ課題があるが、国会議員は新自治政府を必要とする人々の声に耳を傾けると確信している」と述べた。

 一方、上院で同法案を審議している地方自治委員会のマルコス委員長は、「上院では(下院のような)強行採決はしないだろう」と述べ、慎重な審議を示唆した。同委員長は、先にドリロン上院、ベルモンテ下院両議長が申し合わせた6月11日(会期末)までの本会議可決にも難色を示している。

 MILFが反対する下院特別委員会での主な修正内容は以下の通り。

【天然資源の探索・開発・利用】特定の海域を含む新自治政府の領域内における天然資源の探索・開発・利用の権限を定めた条項に、「戦略的鉱物資源(strategic minerals)を除いて」という文言が追記された。MILF側は、具体的にどの資源が「戦略的鉱物資源」に当たるのか定義があいまいなため、資源利用による歳入の自治が確保されていないと反対している。

【先住民族権利法】原案にはなかった、先住民族権利法(IPRA)の有効性を認知する文言が付け加えられた。先住民族の権利を保護する責務についても、新自治政府の独占権限から、中央政府との共有権限に変更。複数の先住民族組織が同法律の有効性の認知を強く求める一方で、認知の明記によって新自治政府下でイスラム教徒と先住民族の分断を招き、自治政府歳入の平等な分配を妨げるとの声も出ている。

【君主「ワリ」制度】バンサモロ議会の形式的な君主「ワリ」制度は、国家の中の国家「サブステート」に当たると見なされ、共和国憲法に違反するとの理由で削除。MILFは議会に象徴君主がいる国は多く珍しくないとし、本会議で盛り込まれることを期待している。

【ARMM資産の扱い】原案では、現ARMMが所有する資産はすべて新自治政府に移譲されることになっていたが、このうち新自治政府が管轄する領域外にある資産についてはフィリピン政府に返却すると修正された。

【国軍の活動に関する調整】新自治政府領域内における国軍の活動について、大統領と新自治政府の首相の連携・調整協約を確立する条項が削除された。

 このほか、選挙関連行政や監査、汚職事件の捜査訴追、人権保護、警察行政などを担当する新自治政府の独自組織については、それぞれ中央選管、会計検査院、行政監察院、人権委員会、国家警察などを定めた共和国憲法の条項に抵触する恐れがあるとされており、本会議でも慎重な議論な予想される。

7) スル州のモスク付近で爆発、警官11人と民間人7人負傷

 29日午後7時半ごろ、スル州ホロ町アストゥリアスにある警察施設敷地内のイスラム教寺院(モスク)付近で、手投げ弾と手製爆弾が相次いで爆発し、警官11人と民間人7人が負傷した。

 軍・警察の調べでは、何者かが投げた手投げ弾がまず路上で爆発し、居合わせた未成年3人を含む民間人7人が爆弾の破片を受けて負傷した。1回目の爆発を受け、警官らが現場に駆けつけたところ、より強力な手製爆弾が爆発し、警官11人が負傷した。

 同州を拠点に活動する武装組織アブサヤフの幹部1人が21日に警察との交戦で死亡しており、国家警察同州本部は、アブサヤフのメンバーによる報復攻撃とみて犯人の行方を追っている。

 

日刊『まにら新聞』(http://www.manila-shimbun.com/
Minda News(http://www.mindanews.com/) 
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Philippine Star(http://www.philstar.com/
ABS-CBN News(http://www.abs-cbnnews.com/
GMA News Online(http://www.gmanetwork.com/news/
Manila Bulletin(http://www.mb.com.ph/

フィリピン在住 大矢南
Mindanao, May 2015

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