May 2015: Myanmar

1) トゥラ・シュエマン下院議長、アメリカ訪問
2) パンサン会議開催も、NCCT内の合意形成至らず
3) ロヒンギャ問題、深刻化。政府はミャンマー国民と認めず
4) ロヒンギャ問題に関する国際会合、開催
5) ロヒンギャ・難民問題に関する国内世論と反応
6) 女性仏教徒の特別婚姻法、議院可決へ
7) 2014年国勢調査結果公表、民族・宗教人口比率については先送り
8) 88年世代平和オープンソサエティ、総選挙はNLDと協働
9) コーカン自治地域における非常事態宣言、90日延長

1) トゥラ・シュエマン下院議長、アメリカ訪問

下院議会議長トゥラ・シュエマンが、4月末から5月初旬にかけて、アメリカ合衆国を訪問し、政治・経済各関係者と会談した。今回の訪問は、アメリカ下院議長John Boehnerの招待によるものであり、4月30日に、同氏を含むアメリカ議会下院議員二名と会談した。会談のなかでは、ミャンマー連邦議会両院が連携して民主化改革に関する問題について率直に議論していくというコメントが発表された。さらに、ワシントンのアメリカ‐アセアン貿易会議事務局にてアメリカの企業主らと会合を行なった。その協議のなかで、ミャンマーにおけるアメリカ企業の投資の促進と、両国の貿易関係の発展について話し合った。出席した経営者らからは、ミャンマー国内での投資状況と貿易に関して質問も出された。

その後ニューヨーク市へと移動したシュエマン議長は、5月5日に国連総書記長であるバン・キムン氏と会談。会談のなかでは、ミャンマーにおける人権問題、民主化、平和構築などについて、意見交換し協議を行なった。シュエマン議長は先月にも中国への訪問を行なっており、諸外国との関係強化に努めている。

Myanmar Alin—
   Vol. 54, No. 210, May 3, 2015
   Vol. 54,  No. 214, May 7, 2015

2) パンサン会議開催も、NCCT内の合意形成至らず

5月1日~4日にかけて、カチン州パンサンにおいてNCCT(Nationwide Ceasefire Coordination Team/全国停戦調整チーム)参加の少数民族武装組織の代表者会合が開催された。NCCTに含まれる少数民族武装組織は16あり、その中からワ州連合軍(UWSA)を含むカチン独立機構(KIO),カレン民族同盟(KNU)、タアン(パラウン)民族解放軍(TNLA), カレンニー民族進歩党(KNPP)、新モン州政党(NMSP)、ヤカイン軍(AA), パオゥ民族解放戦線(PNLO)、ミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA/コーカン武装組織), シャン州発展党・シャン州軍(SSPP/SSA), シャン州和解評議会( RCSS/SSA), 民族民主同盟軍(NDAA)の12団体が本会合に出席した。既にNCCTと政府側の間では停戦協定草案への合意が得られているが、中央政府との交戦が続いている武装勢力も取り込んだ少数民族勢力側の合意形成を図るため、各グループ代表者が召集された。

この会談において、NCCT草案の内容に修正を加えるという決議がなされた。具体的には、行動指針と共同監視委員会に関する項目を草案に書き加える方向で話し合いがまとまった。しかし、コーカン武装勢力、アラカン軍、UWSP の3団体は、現在も中央政府と戦闘状態にあることから、NCCTからの撤退の意思を同時に表明した。これに対し、NCCT代表側は再検討を求め、引き続き協議を継続していくと発表した。

加えて、今回の会議に参加していない少数民族勢力から、NCCT参加団体全てが出席していない会議での決定は正式なものではないとする声明も発表され、依然としてNCCT全体の足並みは揃っていない。内部分裂を避けるため、NCCTを一度解散し新たな少数民族勢力代表組織を結成する可能性が出てきたという報道もある。NCCTは、全少数民族武装グループを含めた合意形成を目指し、来月にカレン州ロキーラにおいて代表者による会合を再度開催する予定である。

7Day Daily—
   No. 721, May 2, 2015
   No. 724, May 5, 2015
   No. 726, May 7, 2015
Democracy Today—
   Vol .2, No. 119, May 9, 2015
Myamar Alin—
   Vol. 54, No. 216, May 9, 2015

3) ロヒンギャ問題、深刻化。政府はミャンマー国民と認めず

ロヒンギャ問題が、今月になり国際社会や諸外国を巻き込んで一層深刻化してきた。4月末にマレーシア国境に近いタイ南部において、32体の死体が埋められているのが発見された。これらの死体は以前に難民避難シェルターが設置された場所から見つかり、ミャンマーとバングラデシュからやってきたベンガル人の不法移民者である可能性が高い。そのなかには人身売買で取引されたロヒンギャの人々も含まれている可能性があるという。タイ警察によれば、この避難シェルターにはロヒンギャの人々が200から300人ほど収容されていたという。その後、マレーシア側でも同様に不法入国者らの死体が埋められていたことが確認された。さらに、5月中旬にはタイとインドネシアの沿岸に漂流している難民船が発見され、ベンガル人難民約300名と500名がそれぞれ発見された。タイ・マレーシア・インドネシア三カ国の沿岸において発見・保護された難民は合計約7000名にのぼるとみられる。周辺諸国は、人身売買などで不法移民として流入してくる難民はミャンマー国内での迫害が原因であり、同国に責任があると非難した。国連や関係諸外国もロヒンギャの人々に国籍を付与し、イスラム教徒への迫害をやめるよう求める声明を相次いで発表した。マレーシアとインドネシア政府は、短期的措置として、難民らを一時的に受け入れ一刻も早く本国へ送還できるよう支援すると発表した。

ミャンマー政府は、5月20日にヤカイン州沿岸の領海の警備強化に努め、発見された難民について取り調べを行なうと発表した。同時に、ロヒンギャに対する弾圧に反対する国際社会の批判に懸念を表明した。ミャンマー政府は、難民らはミャンマーで迫害された者ではなくミャンマー国民でもないと強く否定し、人身売買という国際的な問題である本件については、近隣諸国が連携して対処していくべきだという見解を示した。21日には、アメリカ合衆国国務副長官ブリンケン氏がミャンマーを訪問し、テインセイン大統領、ミンアウンフライン将軍、連邦議会トゥラ・シュエマン議長とそれぞれ対談を行い、難民問題について人道的措置を取ることを確認した。その後、政府は一時的な措置として難民らをヤカイン州に設置した避難所で保護すると決定し、本国であるバングラデシュへ順次送還できるよう取り組むと発表した。ミャンマー政府側は、この措置は人道的観点に基づくものだとしている。

7Day daily—
   No. 722, May 3, 2015
   No. 727, May 8, 2015
   No. 735, May 16, 2015
Democracy Today—
   Vol. 2, No. 126, May 16, 2015
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   Vol. 54, No. 227, May 20, 2015
   Vol. 54, No. 229, May 22, 2015

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4) ロヒンギャ問題に関する国際会合、開催

5月29日には、バンコクにおいてロヒンギャ問題について協議する国際会合が開かれた。同会合には、タイ、ミャンマー、マレーシアの政府高官らが出席し、国連機関やアメリカ、日本などの諸外国もオブザーバーとして参加した。同会合では、問題化している不法移民や漂流を続ける難民問題と、人身売買・密輸の問題について話し合いが行なわれた。UNHCRの高等弁務官補が、国籍のないベンガル人に対して国籍を付与していないミャンマーに責任があるとし、ロヒンギャに対する迫害が行なわれていることを非難した。対するミャンマー政府代表団は、難民らがミャンマーから迫害された者であるとは認めず、この件について国連側は情報不足であり十分に理解していないと反論。ミャンマーに責任を転嫁すべきでないと牽制した。問題となっている難民らは、人身売買の問題が引き起こした不法移民であるベンガル人だという主張を貫き、ロヒンギャの存在と彼らに対する迫害を認めない姿勢を強調した。その上で、これは国際的な人身売買に関する問題であり、この問題が拡大しないよう諸外国と連携していく意向を示した。

7Day Daily—
   No. 749, May 30, 2015
Democracy Today—
   Vol. 2, No. 140, May 30, 2015

5) ロヒンギャ・難民問題に関する国内世論と反応

国連を含む諸外国と国際メディアが問題となっている難民らがミャンマーにおいて迫害された者であるという見解への反対を表明するため、民族問題に関するミャンマー人活動家らが抗議デモを行なった。難民らはミャンマー国民ではなくバングラデシュ国民であるため、国内居住は受け入れないと叫んだ。抗議デモは5月27日にヤンゴン市内において行なわれ、仏教僧侶500名ほどを含んだ参加者らが抗議デモの行進を行なった。

抗議デモにおいて、漂流民は他所へ行け、俺たちの海岸に来るな、不法侵入者のベンガル人は我われの敵、国連側につくな、ロヒンギャはミャンマーには存在しない、我々国民を侮辱するなと叫びながら、参加者らは国際社会からの非難への反対意見を述べた。その他に、ミャンマーへの不法侵入者を定住させるよう支援する国内外の団体は、ミャンマーにとって永遠に敵であること、ミャンマーの歴史のなかにロヒンギャは全く存在しないという意見もみられた。

また、民営新聞の社説や報道のされ方にも、ロヒンギャ問題に対するミャンマー社会の強硬な姿勢が表れている。一貫して「ベンガル人」と呼ぶミャンマー政府同様、ロヒンギャという呼称は見受けられず「不法移民のベンガル人」と一般に表記される。また、7day dailyの5月17日の社説では、バングラデシュ側の政治・経済・生活状況が困窮しているために難民流出が続いているとし、あくまでもバングラデシュにこの件の責任があると指摘している。さらに、イギリス植民地期に定められた公定民族にロヒンギャもベンガル人も含まれていないことに言及し、ミャンマー国内にロヒンギャが歴史的に存在しないことの根拠としている。ロヒンギャに対する迫害については以前にも何度か問題となってきたことから、この問題を「前政権から引き継がれた悪しき遺産」であると評し、ミャンマーに一切の責任がないことを強調している。

7Day Daily—
   No. 736, May 17, 2015
   No. 745, May 26, 2015
Democracy Today—
   Vol. 2, No. 138, May 28, 2015

6) 女性仏教徒の特別婚姻法、議院可決へ

女性仏教徒の婚姻に制限を加えるミャンマー人女性仏教徒特別婚姻法案が、民族代表院において可決された。同法案は、既に人民代表院での審議・可決を終え、今年の3月に民族代表院へ送られていた。上院の法案委員会における協議・修正の後、今月から議会審議が始まっていた。

今期の議会では、法案委員会メンバーの議員からの修正案について説明が行なわれ、それぞれについて協議が行なわれ、4月28日に可決の運びとなった。

この特別婚姻法案は、ミャンマー人仏教徒女性が非仏教徒の男性と結婚することを禁じており、その場合に男性は仏教への改宗が義務づけられている。改宗する場合には関係するオフィスへ改宗の申請を行なう必要がある。同法案の目的は、仏教徒女性が他宗教へ強制的に改宗させられることを防ぐことであると、これまで説明されているが、これは主にイスラム教のことを意識した法案であると考えられている。国内外の人権団体からは、女性の権利を制限する内容であるという批判も挙がっていた。

7Day Daily—
   No. 747, May 28,2015

7) 2014年国勢調査結果公表、民族・宗教人口比率については先送り

2014年に実施された国勢調査の結果が今月末に公表された。1983年ぶりに実施された国勢調査の結果、全人口は51,486,253人であるほか、人口分布や識字率、就学率、生活状況なども明らかにされた。2014年国勢調査はミャンマー語と英語で公表され、全国版の報告書のほかに、管区・州ごとの報告書も公表された。

国勢調査結果公表に際し、ネーピードにおいて記念式典も開催された。今回の国勢調査に協力した国連人口基金(UNFPA)側によると、同報告書にはヤカイン州に多く居住しているロヒンギャの人々に関しては統計のなかに含まれていない。その他、カチン州やカレン州の一部地域も含まれていないとされ、約200万の人口が国勢調査に含まれていないことになる。

また、今回発表された報告書では、民族分布や各民族名、宗教別統計、就業者の職種などの統計は先送りとなった。これらの項目については、2016年初めに修正した報告書が公表される予定。さらに、今後少数民族言語への翻訳も行なわれる予定である。各管区・州が翻訳の必要があると判断した箇所を、それぞれの関係者が必要に応じて翻訳作業にあたるという。

7 Day Daily—
   No. 749, May 30, 2015
Democracy Today—
   Vol. 2, No. 140, May 30, 2015
   Vol. 2, No. 131, May 21, 2015

8) 88年世代平和オープンソサエティ、総選挙はNLDと協働

ミャンマーの民主化を求めて活動している88年世代平和オープンソサエティは、来たる総選挙では一政党としては参加せず、立候補するメンバーはNLDから出馬すると発表した。同団体第一総書記であり、かつての学生運動指導者であるミンコーナイン氏は、1990年選挙25周年を記念した共同声明発表記者会見において、「我われ(の団体)出身の議員がいた方が良い。その際には、彼らへの支援も行なう。総選挙においては、NLDと対立するのではなく連携していく」と発表した。その他、88年世代平和オープンソサエティとNLDは、総選挙、憲法改正、民主化問題、国内秩序の安定、次回の6者会議開催などについても協議した。

記者会見のなかでは憲法改正についても言及し、両議院で審議中の憲法改正問題において全く具体的な話し合いが行なわれていないと政府側の対応を非難した。また、憲法改正に必要な国民投票を今月(5月)に行なうと以前に議会から発表されていたことについても、具体的な動きがみられないことを指摘した。88年世代とNLDはこれらの問題の改善・解決にむけて、今後も共同で活動を続けていく予定。

Democracy Today—
   Vol. 2, May 28, 2015
7Day Daily—
   No. 747, May 28, 2015

9) コーカン自治地域における非常事態宣言、90日延長

シャン州北部のコーカン自治地域における非常事態宣言について、期限を90日延長すると大統領が発表し、議会へ承認を求めた。

今回の措置は、シャン州ロウッカイン地域における非常事態宣言の発令が今月17日に期限満了を迎えるが、同地域における統制、地域秩序の回復、法による支配が回復されていないため、90日間延長する必要があるという政府見解によるものである。

この命令について、5月14日に開かれた連邦議会においてウェイルウィン国防相は「2015年の2月17日から5月17日まで、同地域の政治、社会、治安、経済的状況が通常の状態へ回復していないため、憲法に基づいた権限により、定められた期間延長する必要がある。(非常事態宣言は)指令2015年第1号の発表から90日過ぎた5月17日に期限満了となるが、同地域における統制、地域秩序の安定と法の支配を通常な状態へと回復させるため、大統領が連邦議会の承認によって指令を必要な期間まで延長させると決定した。よって、シャン州コーカン自治州における緊急事態宣言の効力を維持するために、指令をもう90日間継続するよう議会から承認を得るものである。」と議会へ説明した。

非常事態宣言の延長発令に伴い、同日に議会において審議が行なわれた。議会審議において、非常事態宣言延長への反対票なしで同発令は承認された。与党のUSDPばかりでなく、野党のNLD出身議員も承認賛成の票を投じている。

コーカン武装勢力と中央政府の間では、今年2月から交戦が続いており、一部では国境を越えた中国の関与も噂された(中国政府は政府としての関与を否定)。現在も戦闘は続いているが、国軍と敵対するコーカン側に関する報道を控えるようにという政府側の発表もあり、報道は制限されている。国営新聞ではミャンマー国軍側の奮闘が報じられているが、戦闘の詳細な経緯や同地域の状況については明らかにされていない。

7Day Daily—
   No. 723, May 3, 2015
Democracy Today—
Vol. 2, No.125, May 15. 2015
Vol. 2, No. 126, May 16, 2015

藤村瞳
APBI Monitor, May 2015, Myanmar

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